論文「水と芸能とヒルコ神」 論文「水と芸能とヒルコ神」

えびす懸賞論文

<「えびす懸賞論文」受賞作品発表>

最優秀論文賞

「水と芸能とヒルコ神」河内厚郎 

【講評】
西宮神社の社伝に基礎をおきながら、史料や先行研究に依拠してヒルコの性質を考察することで、神話時代の、ひいては現代にもつながる日本社会の有り様と日本人の精神構造、この場合阪神間モダニズムの内面からの読み解きを試みている。前半では、神話におけるヒルコの物語に注目する。河合隼雄氏の議論を参照し、唯一神の存在しない日本神話に固有の特徴は「中空均衡型」であり、微妙な均衡関係を保った神々の存在があるとする。そして、かかる特徴のなか追放されたヒルコの異端性に注目し、彼はアマテラス=女性の太陽神に対するヒルコ(日の子)=男性の太陽神であり、ギリシャ神話との比較から西洋的自我の萌芽であり、一時は切り捨てられるものの、最終的に彼を祀った西宮は西洋的自我を受容したとして、和洋折衷の阪神間モダニズムの精神性にも接続させている。
後半では、ヒルコともつながりの深い人形遣い・文楽について考察を加える。前半における議論を継承しつつ、文学者によるキリスト教文明の日本における受容にまつわる指摘を引用し、近年上演された、キリストの生涯を描く人形浄瑠璃の事例について、異なる事物を同化していった、阪神間モダニズムのあらわれと評価する。史資料の引用と研究者・文学者の見解を前提に、ヒルコとその伝播に重要な役割を果たしたとされる人形遣い(文楽)という、西宮神社において重要な2つのテーマについて、西洋との対比を織り込みながら、阪神間モダニズムへの新たな視座として導入を試みた内容である。

「水と芸能とヒルコ神」

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